専門人材研修会リポート(上) 変革を起こせるプロを育成

インターンシップの行く先

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インターンシップの採用選考化、ワンデーインターンシップの呼称廃止、キャリア教育としてのインターンシップの推進など、インターンシップを巡ってさまざまな動きがある中、インターンシップの専門人材の育成が急がれています。2020年2月21、22日、東京・品川にある東京海洋大学でインターンシップ専門人材研修会が開催されました。その様子を紹介します。

研修会は一般社団法人産学協働人材育成コンソーシアム(CIAC)が主催する「インターンシップ専門人材研修会【発展編:STEP3】」。日本学生支援機構(JASSO)が開催した「インターンシップ専門人材セミナー(基礎編)」、CIACが開催した「インターンシップ専門人材研修会【実践編:STEP2】」を受講した人が参加できます。研修会には全国23大学・短期大学から25人が参加、終了後には「CIAC 認定インターンシップコーディネーター」となりました。

大きく動くインターンシップ

インターンシップは、就活開始時期が後ろ倒しされた2016年卒者向けから採用色が強まり、今では実施する企業の目的は教育よりも採用の方が大きくなっています。採用開始時期の後ろ倒しによって学生との接触機会が減った企業がインターンシップを説明会や選考に使い始めたからです。このような変化の中で、「ワンデーインターンシップ」や夏季・冬季休暇以外の平日実施のインターンシップが現れました。

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インターンシップの本来の意味である「就業体験」とかけ離れたプログラムや学事日程に支障を与えるプログラムに対する批判の声が大学側から高まりました。これは経団連と大学関係者らからなる「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」でも議論されており、年度末にはインターンシップに対する指針が示されると見られています。

これに先立ち、全国求人情報協会は会員である求人メディアに対して「学事日程に影響しないインターンシップの開催を推進する」「ワンデーインターンシップの呼称廃止」「採用選考を伴うインターンシップ情報の提供はしない」などを求めました。これによって就活サイトは「1日仕事研究」などへの名称変更や平日を含むインターンシップの掲載禁止などの動きを進めています。

変革を起こせる人材育成を目指して

発展編はインターンシップを大学教育の改革にまで発展させることができる人材の育成を目標にしています。そのため、「高等教育と最新動向の分析と将来構想」「大学教育改革とデザイン思考」「インターンシップ専門人材の専門性と倫理」「イノベーションのデザインとゴール」「イノベーションの実行戦略立案」「長期・有給型インターンシップの法的留意点・リスク管理」といったセッションが並び、各セッションの中にグループワークがあります。

冒頭、CIACの松高 政 代表理事(京都産業大学経営学部准教授)からの趣旨説明の後に、参加者の自己紹介がありました。参加者からは担当業務、組織の体制、課題などに加え、「孤立無援の状態」「専任職員2人で就職支援とインターンシップを担当している」などの声も。参加者の熱い想いの込められた自己紹介が続き、時間は予定の倍以上になりました。

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各セッションの中には多くのグループワークが組み込まれています。ワークのテーマは「インターンシップの現状をどう捉えているか」「インターンシップの今後の発展に重要なものは何か」「インターンシップなどの大学教育に変化をもたらす可能性のあるもの」など。ワーク中は自校の事例報告や課題解決だけでなく、日本の大学教育におけるインターンシップなど、高い視座からの議論が繰り広げられました。

また、多くの参加者から聞かれた「事前課題も多かった」という言葉通り、「文部科学省中教育審議会「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」を読み、今後の高等教育を考える上で重要なこと」などのレポートを持ち寄り、グループ内で共有していました。

専門人材として学校を変えていきたい

2日間の研修を終えて、参加者から次のような振り返りの声が聞かれました。
「最近ではルーティンワークになっていた面もあったが、これを機に来年度に向けてインターンシッププログラムをブラッシュアップさせていきたい」
「学内では完全アウエーでやっているが、研修会で仲間が増えた。今後は専門人材として組織改革含め、学校を変えていきたい」
「一般的な研修だと何を学ばせてもらえるんだろうという気持ちで参加しますが、この研修は自分から主体的に学ぶ気持ちがないといけない。多くの情報や仲間を得られたことに感謝します」
「日ごろから大学と産業界はなぜ分断されているのか疑問に思っていた。研修では両者をつなぐのがインターンシップだと確信した」
「さまざまなインターンシップのアイデアを得られた。ほかの大学の皆さんが誇りをもって取り組んでいることを知ることができ、大学職員はこうあるべきだと感じることができた」

専門人材研修会リポート(下)は、一般社団法人産学協働人材育成コンソーシアム(CIAC)代表理事、松高 政 京都産業大学経営学部准教授のインタビュー記事です。
(渡辺茂晃)