千葉県インターンシップフォーラム(下)企業と学生が感じたオンラインの良さ

インターンシップの行く先

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フォーラムの後半は「コロナ禍におけるインターンシップ」をテーマにしたパネルディスカッションです。神田外語大学のキャリア教育部キャリア教育チームゼネラルマネージャーの杉本雅視さんをモデレーターに、受け入れ企業の担当者、参加学生、千葉県職員が、コロナ禍でのインターンの開催方法、感染予防策、オンライン型の良さなどについて話し合いました。

「千葉県インターンシップフォーラム(上)コロナ禍でのインターン、学生たちはどう感じたのか?」はこちら

【モデレーター】神田外語大学 キャリア教育部キャリア教育チームゼネラルマネージャー 杉本雅視氏
【パネラー】
企業:千葉トヨペット株式会社、東邦オート株式会社、株式会社成田デンタル
自治体:千葉県
大学生:敬愛大学、千葉経済大学、和洋女子大学


千葉県の商工労働部雇用労働課若者雇用推進班の今泉りえさんは、「インターンがこれだけ急拡大していることは、企業にとっても、学生にとっても欠かせない場になっているからだと思います」と話しました。現在、若者や就職氷河期世代の就職支援などを担当している立場から、インターンの重要性を感じている様子でした。

店舗でお客様と同じように学生を迎える

「イメージ先行になりがちな職業観や働き方をリアルな職場で体感してほしい」という趣旨で、毎年5日間のインターンを実施している千葉トヨペット。コロナ禍でもその趣旨を大切にしたいと、参加人数を減らしたうえで対面型を組み入れたハイブリッド型インターンを実施しました。3日間は接客マナーや身だしなみなどを習得するオンライン研修、2日間はショールーム店舗でお客様の商談に同席するなど対面型で実施したことを報告。

同社採用グループ長の中井由佳梨さんは、「対面も取り入れたことで、『人と人のつながりを感じられる』インターンになったのでないでしょうか」と言い、「コロナ禍でも対面型に参加できてよかった!」という学生の声を紹介してくれました。

他のパネラーから「店舗に学生を受け入れることへの不安はありませんでしたか?」という質問がありました。中井さんは「店舗は車が何台も入る広い空間であり、換気など感染対策をしっかりしてお客様をお迎えしています。お客様と同じように対応すれば学生を受け入れることも可能」と、対面型の実施に至った背景を教えてくれました。

オンラインでも学生の人柄はわかる

ボルボなどの輸入車を扱うディーラー、東邦オートのインターンは、例年ショールーム店舗での実習型ですが、20年は2日間のオンライン型に切り替えて実施しました。同社取締役管理本部本部長の古川靖章さんは「1対1に近い形で、接客での言葉遣いの研修なども取り入れました。学生さんと密なやりとりをしているうちに、オンラインでもどういう人柄なのかがよく分かりました」と説明。オンラインでも対面型と変わらぬコミュニケーションがとれたようです。

1対1で実施するオンラインインターンの効果は、歯科技工の総合商社である成田デンタルの田辺輝明さんも感じていました。「営業ロールプレイングを中心に5日間オンラインで実施しました。最終日に、1人30分ずつインターンを振り返ってもらったのですが、対面型より学生さん一人ひとりのことをよく理解できたように思います」。「14人の参加者のうち8割が本選考を受けてくれました」とも言い、学生側も企業や仕事のことを十分に理解できたのでしょう。

自分自身でしっかり業界・企業研究する気持ちに

20年7月にオークラ千葉ホテルのオンライン型インターンに参加した敬愛大学3年生の佐藤遥さん。「オンラインで現場の雰囲気をつかめるか不安でしたが、社員の方の裏話や業務をする際に気を付けていることなどを聞けて、業界知識が広がりました」。就業体験はできませんでしたが、社員の方の話からホテル業務のリアルを感じ取ったようです。

「今後の就活への考え方は変わりましたか?」という質問には、「企業へのイメージが自分の中で固定化されていたのですが、実際に社員の方のお話を聞いて、自分の視野が狭いことに気づき、もっと業界分析をしなければと思いました」と回答。新たな視点、意欲が湧いてきました。

実施内容によって対面型、オンラインを使い分ける

「政治や社会を学び、社会を正しくとらえて行動できる社会人になりたい」と話したのは、和洋女子大学2年生の内田梨奈さん。NPO法人ドットジェイピーで、県議会議員のもとでインターンを経験しました。夏休みの2カ月間、議員に同行して新しい施設の見学をしたり、実際の委員会を傍聴したりする対面型と、オンラインで定型業務をするハイブリッドのインターンです。

「コロナ対策はしっかりしていましたし、実施内容と自分のスケジュールを考慮いただきながら対面とオンラインを使い分けて参加できたので、不便を感じたことはありませんでした」。コロナ禍での長期インターンもスムーズに経験できたようです。一風変わったインターンに、企業の方から「参加してみたい!」という声が挙がりました。

やっぱり対面型に期待

千葉経済大学2年の吉谷梓さんは前半の取り組み事例で発表したシルバーとっぷのほかに、電磁鋼製品製造業の松本ESテックの対面型インターンにも2日間参加。「今まで見たこともないような機械を間近で見るなどの経験は新鮮でした。これからも積極的に参加したい」と、3年生以降の参加に意欲を示しました。また、「やはり対面でないと伝わらないこともあるので、対面型のインターンを実施していただけることに期待したい」とも。現場での就業体験の全面的な再開に期待していました。

新型コロナによって対面型からオンライン型中心に変わったインターンシップでしたが、確実に学生の成長を促し、就職意識を高めたことがパネルディスカッションからも伝わってきました。感染症拡大から1年余り。今後もその影響がどう出るのか見えない不安はありますが、企業の柔軟な対応、学生の意欲に明るい希望が見えたフォーラムとなりました。

写真素材/PIXTA