社会人基礎力協議会インタビュー(上)コロナ以降、「考え抜く力」が求められる時代に

社会人基礎力育成術

kisoryoku1m.jpg

アフターコロナに重視される社会人基礎力

大学のイメージや評価は、入試偏差値から各大学出身者の活躍ぶりへと、変化が見られる昨今。企業の採用で重視されるのは、「知力・学力」よりも「行動力」「対人力」という調査結果が出ました(※)。これらの力を持った人材を育てるためには、どのような教育が必要なのでしょうか。一般社団法人社会人基礎力協議会代表理事の長尾素子先生と、同協議会理事で社会人基礎力グランプリ委員会委員長の市川純章先生に、大学での人材育成方法などについて話を聞きました。
(※)「企業の人事担当者から見た大学イメージ調査」/日本経済新聞社と日経HRの共同調査。2021年2月現在の全上場企業(ジャスダック新興市場を含む、外国会社は除く)と一部有力未上場企業4850社を対象に調査(回答社数834社)。(「価値ある大学2022年版 就職力ランキング」)

「社会人基礎力協議会インタビュー(下)基礎力GPの事例を教育の参考に」はこちら

社会人基礎力とは「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として、経済産業省が2006年に提言した能力です。3つの能力(前に踏み出す力、考え抜く力、チームで働く力)と12の能力要素で構成されています。

多様な価値観を尊重し、イノベーションを起こせる人材育成を

kisoryokuikusei1_2.jpg (一社)社会人基礎力協議会代表理事の長尾素子先生(拓殖大学商学部教授、株式会社TOKYO GLOBAL GATEWAY 取締役COO)
――大学でなぜ社会人基礎力育成の重要性が高まっているのでしょうか。
長尾 社会のデジタル化、グローバル化が進み、さらにはコロナ禍......。変化が激しい時代において、これまでのビジネスモデルが通用しなくなり、企業では「新しいアイデアを出せる人」「イノベーション(技術革新)を起こせる人」を求める傾向が一層強まっています。

「コロナ禍だからできない」ということも増えましたが、「できないからやらなくていい」という発想は、ビジネスの世界では通用しません。できることは何かを考え抜き、新事業を起こすために「前に踏み出す力」の主体性や実行力が必要になります。そうした企業のニーズに合わせ、大学でも社会人基礎力を育成することが求められているのです。

さらに、「ダイバーシティ&インクルージョン」という考え方で、多様化する価値観を尊重し、生かしていく姿勢も重要になっています。私も、企業の取締役として経営に関わっていますが、その会社では多くの外国人が働いています。企業では近年、外国人や転職者が増え、価値観が大きく異なる人たちと一緒に働いていかなくてはなりません。その中で、お互いにいい関係をつくり仕事を進めていくためには、「チームで働く力」の能力要素の1つである傾聴力や「前に踏み出す力」の働きかけ力も必要です。

自分の意見を持たない学生に、「考え抜く力」の育成を

――社会人基礎力の中でも、特に「考え抜く力」に注目されているのですか?
長尾 社会で多様な人たちと一緒に仕事をしていくことは、実際は非常にしんどいことです。そのしんどいことをどう進めていくのかを考え抜き、ストレスコントロールをしていく――。イノベーションでも、コミュニケーションでも、考え抜く力が必要なのです。しかし、これまで自分で考えなくても進んでいく授業を受けてきた学生は、自ら考えるという習慣がなく、考えないから自分の意見も持っていなかったりします。

例えば、私が担当している「入門ビジネスコミュニケーション」の授業で、学生に「コミュニケーションの定義とは何か」を尋ねると、情報を検索して、検索結果をそのまま答える学生が多くいます。そういうときに、「自分の言葉で話してみて」とさらに問いかけますが、学生は「わかりません」と返答し、その先は何も考えなくなってしまうのです。調べた様々な情報をそしゃくし、それを自分の中に落とし込んで、自分の言葉で話すということをしない。

学生は、人の言葉をスポンジのように素直に吸収する一方で、自分の主義主張はしない。そうなると、人の意見を受け入れるだけになって主体性もなく、双方向のコミュニケーションも成り立ちません。
(編集部 北原理恵)


社会人基礎力(3つの能力・12の能力要素)
能力 能力要素 能力の内容( )内は行動例

前に踏み出す力
(アクション)
主体性 物事に進んで取り組む力
(指示を待つのではなく、自らやるべきことを見つけて積極的に取り組む)
働きかけ力 他人に働きかけ巻き込む力
(「やろうじゃないか」と呼びかけ、目的に向かって周囲の人々を動かしていく)
実行力 目的を設定し確実に行動する力
(言われたことをやるだけでなく自ら目標を設定し、失敗を恐れず行動に移し、粘り強く取り組む)

考え抜く力
(シンキング)
課題発見力 現状を分析し、目的や課題を明らかにする力
(目標に向かって、自ら「ここに問題があり、解決が必要だ」と提案する)
計画力 課題の解決に向けたプロセスを明らかにし、準備する力
(課題の解決に向けた複数のプロセスを明確にし、「その中で最善のものは何か」を検討し、それに向けた準備をする)
創造力 新しい価値を生み出す力
(既存の発想にとらわれず、課題に対して新しい解決法を考える)

チームで働く力
(チームワーク)
発信力 自分の意見をわかりやすく伝える力
(自分の意見をわかりやすく整理した上で、相手に理解してもらうように的確に伝える)
傾聴力 相手の意見を丁寧に聴く力
(相手の話しやすい環境をつくり、適切なタイミングで質問するなど相手の意見を引き出す)
柔軟性 意見の違いや立場の違いを理解する力
(自分のルールややり方に固執するのではなく、相手の意見や立場を尊重し理解する)
情況把握力 自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力
(チームで仕事をするとき、自分がどのような役割を果たすべきかを理解する)
規律性 社会のルールや人との約束を守る力
(状況に応じて、社会のルールにのっとって、自らの発言や行動を適切に律する)
ストレス
コントロール力
ストレス発生源に対応する力
(ストレスを感じることがあっても、成長の機会だとポジティブに捉えて肩の力を抜いて対応する)
出典:「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」報告書、行動例は社会人基礎力に関する研究会「中間取りまとめ」より

商品紹介

testjpg.jpg

【WEB診断】VUCA時代を生き抜く 社会人基礎力診断 定価:1,925(税込)/人

学生の「社会人基礎力」を測るWEB診断です。経済産業省が2006年に定義した「社会人基礎力」の3能力12能力要素と、2018年に再定義した3つの視点を測っています。「低学年向け」と「高学年向け」があり、結果レポートの「診断結果の生かし方のアドバイス」に違いがあります。



WEB診断 社会人基礎力診断

【お申し込み】

VUCA時代を生き抜く 社会人基礎力診断

【提供先】

株式会社日経HR
入力例:神田 太郎
入力例:カンダ タロウ

入力例:キャリエデュ大学
診断の種類必須

●ご登録された個人情報は「利用規約」利用規約「個人情報保護方針」個人情報保護方針「個人情報の取り扱いについて 」個人情報の取り扱いについてに従い、取り扱いいたします。お読みいただき、同意していただいたうえでお問い合わせください。