これからの就活ルール(3)インターンシップ=就業体験はどこへ?

漂流する就活渡辺茂晃

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目的の異なるインターンシップ

経団連と大学関係者からなる「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」が発表した「中間とりまとめと共同提言」を読み解く3回目です。前回の「これからの就活ルール(2)本当に採用するのか? 留学生と文系院生」では、企業は留学生や大学院修了生を積極的に採用するのかについて書きました。今回はインターンシップに関する提言についてです。「インターンシップ=就業体験」と言えるときは来るのでしょうか?

「これからの就活ルール(1)新卒一括採用から通年採用へ?」はこちら
「これからの就活ルール(2)本当に採用するのか? 留学生と文系院生」はこちら
「これからの就活ルール(4)タスクフォースでは何が決まるのか?」はこちら

(4)今後のインターンシップのあり方
・目的・意義・内容・期間等について、産学および社会的な共通認識の確立が必要。
・1~2年次のキャリア教育には学業への動機付けや業界・企業・職種への理解促進が、長期インターンシップにはミスマッチによる離職防止などが期待できる。
・ワンデーインターンシップは、教育的意義を持つインターンシップとは区別し、別の呼称とする。
・インターンシップで得た学生情報の広報・採用選考活動への活用や、インターンシップの目的・内容の違いに基づく学生情報の異なる取り扱いについては継続的に検討する。

(「中間とりまとめと共同提言-概要-」より)

コーオプ教育を使っては?

冒頭のインターンシップについての共通認識ですが、企業側は「採用に利用したい」、大学側は「教育に利用したい」と、お互いに目的が違っています。目的の異なる2つの活動を1つの言葉で表そうとするから、いつまで経っても"インターンシップ"という言葉の定義に無駄な時間を割くことになるのです。米国のように、「大学主導で管理運営する教育目的の就業体験=コーオプ教育」、企業等が主導で管理運営する採用目的の就業体験=インターンシップ」と分ければいいだけのことではないのかと思います。

京都産業大学は以前からこのコーオプ教育に取り組んでいます。キャンパスでの学習と就業体験を「サンドイッチ方式」で交互に繰り返す「O/OCF‐PBL」と言い、「大学での学び(On Campus)と実社会(Off Campus)での学びとを融合(Fusion)させた、実践指向型の課題解決型学習(PBL:Project Based Learning)にて、1年次から3年次まで体系的な能力伸長を図るものです」(京都産業大学ホームページより)。

大学がカリキュラムとして企業等での就業体験を教育に活用するコーオプ教育を産学で認識し、社会に浸透させてはいかがでしょうか。提言の注記では、「1・2年次の企業内での実践的教育は高学年を対象とした「インターンシップ」とは区分し、「キャリア教育」と呼ぶこととする」とあるが、「低学年のインターンシップ=キャリア教育」とすると、今度は「キャリア教育の定義が...」といった話になります。すでに欧米で普及しているコーオプ教育を使えば、もっと実のある議論ができるでしょう。

コーオプ教育を使っては?

現状を見る限り、大学3年生を対象にした自由応募のインターンシップは、本来の意味である就業体験ができない、名ばかりインターンシップです。建前は業界・企業・職種研究のためのものとしながら、参加した学生には何らかの採用選考での優遇をしており、インターンシップが選考の一部になっています。そして優遇を期待して参加する学生も多くいます。そのため、インターンシップに参加できない(選考に落ちてしまい)学生は、本番を前にして戦意喪失してしまうのです。

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グラフは、就職情報サイト「キャリタス就活」を運営するディスコが企業に実施した調査結果です。インターンシップをジッする企業は年々増えており、就活直前の冬季インターンシップを実施する企業は7割近くにまでなっています。さらに、実施企業がインターンシップ参加者に実施するフォローやアプローチは参加者限定の「早期選考の案内」や「セミナーや懇親会」です。これを見れば、教育とはかけ離れたインターンシップが実施されていることが分かるでしょう。

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インターンシップという名称と現実がかけ離れているなら、いっそのこと現実に合わせるのも1つの手ではないかと思っています。インターンシップと付けば、ワンデーだろうが、長期だろうが、低学年だろうが、すべては採用目的。学生情報も当然ながら採用に使っても良い。言い過ぎでしょうか。
(『学校法人』6月号掲載記事を基に再構成)

プロフィール

渡辺茂晃 渡辺茂晃(株式会社日経HR) 1991年日経事業出版社入社、高齢者向け雑誌編集を経て、96年日本経済新聞社産業部、98年就職雑誌編集、2001年日経就職ガイド編集長、05年日経就職ナビ編集長、09年大学評価・学位授与機構「大学の「学習成果」を軸とした教育・評価・エビデンスの発信を可能とする体制についての研究」研究員、10年経済産業省「社会人基礎力育成グランプリ」運営、12年10月文部科学省「産業界のニーズに対応した教育改善」事業支援、14年桜美林大学大学院大学アドミニストレーション研究科非常勤(~19年4月)、日本経済新聞人材教育事業局「日経カレッジカフェ」副編集長、15年中小企業庁「地域人材コーディネーター養成事業」主任研究員、16年経済産業省「健康経営優良法人認定制度」広報担当、内閣府「女性リーダー育成プログラム」主任研究員、18年4月から現職。著書『実況中継 これまでの面接VSこれからのコンピテンシー面接』『マンガで完全再現! 面接対策』『人気企業内定者に聞いた 面接の質問「でた順」50』など。